令和3年4月16日
校長室から 第7号
若手教師のために その7
叱り方
叱り方は、とても難しい。子供を叱る前に、もう一度冷静に考えてみたいものです。
叱るという行為は、その子供自身に「過ちを認めさせ、正しい生き方をする力をつけてあげる」ことだと思います。教師が叱った後で、叱られた子供が「本当に悪かった」「二度と同じ過ちは繰り返さない」と、本気でそう思うように叱らねば、逆効果になることもあります。特に中学生は、反抗期でもあり、大人のずるさを理解するようになって、素直になれない時期です。次に、失敗例を示します。
教室で、ある子供の文房具が無くなった事件の対応です。休み時間に学級委員をしているAさんのシャープペンシルが無くなりました。申し出を受けた担任の先生は、日頃からリーダーとして活躍しているAさんからの訴えということもあり、学級全体で探すことにしたのです。無くなったペンは、祖父がプレゼントしてくれたという大切なものでした。「Aさんが大事にしているシャープペンシルが無くなった。心当たりのある者は申し出てほしい。また、探してほしい」と、終学活でクラス全員に話しました。
翌日、Bくんが似たようなシャープペンシルを持っていたという情報が数名の子供たちから入りました。Bくんは、日頃から問題行動の多い子供で、家庭生活でも大きな課題を抱えていました。確かに、Bくんが持っていたシャープペンシルは、Aさんが無くしたペンの特徴を全て兼ね備えたものでした。そこで、担任の先生は、Bくんを呼び出し、厳しく追求しました。しかし、Bくんは、強く否定し、さらに反発しました。クラスには、「BくんがAさんの大切にしていたシャープペンシルを盗んだ」という噂も流れました。Bくんの保護者からは、「うちは貧乏だから、高価なシャープペンシルなど買ってあげた覚えはない。うちの息子が盗んだのなら、本当に申し訳ない」ということでした。いつのまにか、犯人扱いされたBくんの生活は、さらに乱れていきました。
真相は、Aさんの勘違いで、無くなったシャープペンシルは、後日、自宅から出てきたのです。Aさんは、自分のせいで大事件となり、怖くなってしまい、自分からすぐに本当のことを言い出せませんでした。後に分かったことですが、Bくんは、優等生のAさんに憧れていて、同じシャープペンシルを持つことで勉強もできるようになるのでは、という思いから、なけなしのお小遣いを貯めて自分で買ったものだったのです。Bくんは教師不信、さらに保護者不信、大人不信となり、「どうせ俺なんか」と、自暴自棄になってしまい、その後の中学校生活における不良行為のエスカレートを止めることはできませんでした。
まるで学園ドラマのようです。ドラマには台本があり、そのとおりに進んでいきますが、実際の学校は台本のようには進みません。予想外のことが起きるものです。先ほどの例は、特別な例かもしれませんが、叱り方の難しさを痛感します。では、叱るとき、どんなことに気を付ければよいのでしょうか。
1 本当に本人が犯したことなのか、事実の確認をする。
2 叱る前に当事者の言い分をしっかり聞く。
3 感情的になり過ぎないように気を付ける。
4 悪い点をはっきりさせ、説得ではなく納得させる。
5 どの子供にも公平に接し、先入観をもたない。
6 くどくどと長時間叱らず、あっさりと叱る。
7 子供に迎合せず、真剣な態度で叱る。
8 他の子供のいるところで叱らない。
9 子供の長所を見つけ、あなたなら正せるということを強調する。
要は、どんな正論であれ、信頼関係のない先生から叱られたとき、その場では「悪かった」と謝っても心からそうは思わず、特に中学生は、反発さえ感じます。ですから、教師自身も日頃から自分に厳しく、授業やその他のあらゆる教育活動をとおして、教師として、人間として信頼を得るように努めなければならないと思います。
本当にその子供をよくしてあげようと、本気で叱ることのできる教師、また、日頃から信頼されている教師の注意に子供の心は動き、そのときは反発しても、少し時間が経過すると素直に反省できるものです。
さらに数年後、同窓会などで、当時の子供たちが大人になってから出会ったときに、「あの頃は素直になれなくて先生に迷惑をかけた」と反省の弁を聞くことになるでしょう。手のかかった子供ほど可愛いと思えるようになるでしょう。
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