令和3年10月21日
校長室から 第14号
若手教師のために その14
天籟(てんらい)
風の吹き方は様々であるが、もろもろの穴に当たればもろもろの音を出し、その音は全てそれぞれの穴が自然に出しているのだ。その音を出させようとしているのは、いったい、誰なのであろうか(そんなものはいない)、と。天地自然の世界には風を吹かせて木々に音を出させようとしている者(主宰者)などはいない。・・・そして、木の穴に風が当たって出る音は、風と穴それ自体が発する自ずからのものだ、と認識するとき、その音こそ天籟に他ならない。
風に吹かれる木々が万籟(ばんらい)の声を発するように、我々の心もまた瞬時もざわめきをやめない。我々の心のざわめきもまた自然の働きとして認識されてくる。心の働きは意識のかかわらないところで勝手に動く。心に真宰(しんさい)があるようであるが、その痕跡は得られない。情況はあっても形はないのだ。【蜂谷邦夫「老子・荘子をよむ」より】
合唱の良いところは、はじめのうちは一人一人の発声がバラバラでも、練習を重ねるうちに、少しずつそろっていき、やがて一つの美しい響きになるところだと思います。
音楽って不思議です。音は一瞬でも、誰かと響きあうと永遠になる。合唱コンクールでは、その取組の中で、一人一人が自分の学級のまとまりや団結を感じることができるはずです。
先生(私)「今度の合唱コンクールで金賞を取る秘策をこのクラスだけに教える。他のク ラスには内緒だ。このクラスには合唱が得意な人もいれば苦手な人もいる。得意な人は苦手な人を責めてはダメだ。本番までにしっかり練習して、下手でもいいから全力で歌おう。そして、他の人の声をよく聴き、心を一つにすること。」
生徒「(ぽかーん)」
先生「実は、本校の体育館には伝説があって、全力で歌い、心を一つにしようとした者だけに聞こえる残響があるんだ。その音を聴けた者は幸せになれる。願いが叶う。」
生徒「ほんとに~。先生 どんな音ですか?」
先生「無音。」
生徒「えっ!それじゃ、わからない。そもそも聞こえないじゃん。」
先生「うーむ、その~、歌い終わった直後の、、、一瞬の静寂の中、ほわーん♪ みたいな。」
生徒「(大爆笑)」
私も「ほわーん♪」で大笑いしてしまい、この時、鬼から仏の笑顔になれたと思います。携帯やスマホの無い時代でしたが、生徒間の情報網はすごいもので、翌日には、、、
生徒「先生、部活の先輩に聞いたけど、そんな体育館の伝説 聞いたことないって。」
生徒「おんぼろ体育館のきしむ音じゃねえのか。ギリギリ(笑)。」
先生「おいおい。内緒だって言ったのに。」
生徒「先輩に聞いただけで、他のクラスには言ってないもん。」
生徒「サッカー部の先輩は、また、先生のたわごとだよ だって。」
そして本番。なんと、これまでで、一番いい合唱になりました。金賞こそ取れませんでしたが、生徒からは「聞こえた」という声がいくつかあがったのです。
生徒「先生、俺、全力を出しきったせいか、なんか聞こえたような気がするんだ。」
生徒「私も聞こえた気がする。そして、幸せな気持ちだった。願い、叶うかな?」
生徒「ええっ!ほんとに? 私、頑張ったけど、聞こえなかったな。余裕もなかったし。」
生徒「金賞クラスの生徒は、みんな聞こえたのかなぁ?」
先生「(ニコニコ)」
その後、クラスはどんどん落ち着いて、なんとなくいい学級になっていきました。
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